お前は誰だと繰り返し鏡にいって返事が返ってきたら驚くってどういうことだよ。聞いてんじゃないのか。
ある日、鏡を見て彼は絶叫した。
うおおお、なんやこれ、ワイの顔はどうなってしまったんや!
そこに昨日までの彼の姿はなかったのである。
昨日より掘りの深くなった顔、なんとなく体毛も強くなっている気がする。くっきりと目鼻立ちが確認できる。
しかし、一概にイケメンになったか? といえば判断の分かれるところであり、なによりいきなり顔が変わったショックのほうが当然大きい。
どうしたら。
どうすれば。
彼は混乱した。
まるで別人だ。別人としか思えない。
しかし、誰かと入れ替わる創作のような出来事が起きたのか? といえば、そう判断する材料は己の体しかない。場所も、持ち物もどうやら変わっていないのだ。
しばらくは立ち眩みを受けたようにうずくまってくらくらとくる現実に耐えるばかりだったが、今日は休日でないことに気が付いた。
どうしよう。
本当にこれどうしよう。
恐る恐る電話をかけたが違和感を持たれる様子はない。
意を決して出社をしたが――誰も、何も言ってくる事はない。
そこには、いつも通りの風景だけがあった。
自分の姿だけがただ変わってしまっただけの、いつも。
姿が濃くなってしまった、しかし人間としての影は薄かったはずの自分の姿だけが――
どうしようってこれ何の話やねんって?
濃いワイの話ですよ。
こいわい話。
こ(い)わい話。
こ わ い は な し !
……オチた?
オチてない……?
でも実際自分の姿が変わってしまっら怖い話だからOK。
それが思い込みでも怖い事には変わりないからね。